コンビニの駐車場を利用する際、入り口付近で「無断駐車を発見した場合は罰金3万円を申し受けます」といった看板を目にしたことがある方は多いのではないでしょうか。
ついうっかり長時間の滞在をしてしまったり、近隣施設への用事のために無断で車を停めてしまったりした際、こうした看板の文言が頭をよぎり、不安を感じることもあるはずです。
本記事では、コンビニの駐車場における無断駐車の法的リスクや、実際に請求される損害賠償の相場、そして看板に書かれた罰金の法的効力について、専門的な視点から詳しく解説します。
コンビニの無断駐車における「罰金」の正体
まず前提として理解しておくべきなのは、コンビニの看板に書かれている「罰金」という言葉の法的な意味です。
法律上の用語として、「罰金」とは刑事罰の一種であり、裁判所が科すものを指します。
したがって、私企業であるコンビニエンスストアのオーナーが、独自の判断で利用者に刑事罰としての罰金を科す権限はありません。
しかし、看板に「罰金」と書かれているからといって、金銭的な支払義務が一切発生しないわけではありません。
コンビニ側の意図としては、これを「損害賠償金」または「違約金」として請求するという趣旨で掲示しています。
つまり、看板の「罰金」という表記は、法的には「無断駐車によって店舗が被った損害を補填するための金銭」と解釈されるのが一般的です。
看板に書かれた「罰金〇万円」に法的効力はあるのか?
多くのコンビニが掲示している「無断駐車は罰金〇万円」という警告文ですが、これにはどの程度の法的効力があるのでしょうか。
結論から言えば、看板に書かれた金額がそのまま全額認められるケースは稀です。
契約の成立と公序良俗
コンビニ側は「看板を掲示している場所に駐車したのだから、その条件に合意して契約が成立した」と主張することがあります。
しかし、法的な観点からは、あまりに高額な金額設定は公序良俗(民法90条)に反するとみなされ、無効になる可能性が高いです。
たとえば、近隣のコインパーキングの相場が1時間500円である場所で、わずか1時間の無断駐車に対して「10万円」を請求することは、社会通念上相当とは認められません。
日本の法律では、実際の損害額を大幅に超えるペナルティを課すことは制限されているためです。
違約金の予定としての性質
一方で、看板の掲示は「違約金の予定(民法420条)」としての役割を果たすことがあります。
これは、損害が発生した際に、あらかじめ賠償額を決めておく仕組みです。
ただし、この場合も「不当に高額すぎる部分」については裁判で減額されるのが通例です。
一般的には、周辺の駐車料金相場の数倍程度であれば、有効な請求として認められる可能性があります。
無断駐車で実際に請求される金額の相場
では、看板の金額がそのまま通らないのであれば、実際にいくら支払う必要があるのでしょうか。
裁判例や実務上の通説に基づくと、以下のような要素を合算して算出されます。
| 請求項目の内訳 | 内容の解説 |
|---|---|
| 通常の駐車料金相当額 | 周辺のコインパーキングの相場に基づく利用料 |
| 調査費用 | 弁護士等を通じてナンバープレートから所有者を特定する費用 |
| 督促費用 | 書面による請求書の送付や連絡に要した実費 |
| 営業損失 | 無断駐車により本来の顧客が駐車できず、売上が減少したことの証明 |
具体的にいくらになるかについては、駐車時間の長さに大きく依存します。
短時間の無断駐車の場合
1時間から数時間程度の無断駐車であれば、周辺相場の数倍(3,000円〜1万円程度)が妥当なラインとされることが多いでしょう。
看板に「3万円」とあっても、実損害との乖離が激しい場合は交渉の余地があります。
長期間・悪質な無断駐車の場合
一方で、数日間にわたる放置や、注意を受けても繰り返すような悪質なケースでは、金額が跳ね上がります。
過去の裁判例(大阪地裁平成30年)では、約1年半にわたって特定のコンビニに無断駐車を繰り返した所有者に対し、合計約920万円の損害賠償を命じた事例もあります。
このケースでは、店舗側の管理コストや、執拗な迷惑行為に対する慰謝料的な要素も考慮されました。
無断駐車が招く法的なリスクと罪
コンビニの駐車場は私有地であるため、道路交通法上の「駐停車違反」は適用されません。
しかし、だからといって法律に触れないわけではありません。
無断駐車は、以下のような法的な罪や不利益を招くリスクがあります。
民事上の不法行為責任
無断駐車は、土地所有者の所有権を侵害する行為であり、民法709条の「不法行為」に該当します。
これにより、前述したような損害賠償責任を負うことになります。
刑事上の責任(建造物侵入罪など)
状況によっては刑事罰の対象にもなり得ます。
- 建造物侵入罪(刑法130条):正当な理由なく他人の管理する敷地に立ち入る行為。
- 威力業務妨害罪(刑法234条):多大な迷惑をかけ、店舗の営業を妨げた場合。
警察は基本的に「民事不介入」の原則があるため、単なる無断駐車ですぐに逮捕されることは稀ですが、あまりに悪質な場合は警察に通報され、被害届が出される可能性を否定できません。
無断駐車をしてしまった場合・請求を受けた場合の対処法
もし不注意で無断駐車をしてしまい、店舗側から警告を受けたり、後日請求書が届いたりした場合は、どのように対応すべきでしょうか。
まずは真摯に謝罪する
気づいた時点で速やかに店舗の責任者に謝罪することが最優先です。
「少しだけなら大丈夫だろう」という甘い考えがトラブルを大きくします。
誠実な態度で謝罪し、その場で適切な駐車料金(数千円程度)を支払うことで、穏便に解決できるケースも少なくありません。
不当な高額請求には冷静に対応する
看板に書かれた「罰金5万円」などの高額な請求をその場で迫られた場合、恐怖心からすぐに全額支払ってしまうのは避けるべきです。
一度支払ってしまうと、その金額に合意したとみなされるリスクがあります。
「法的に適切な損害賠償額を精査した上で対応したい」と伝え、その場では連絡先を交換するに留めるのが賢明です。
弁護士などの専門家に相談する
もし店舗側が執拗に高額な支払いを要求してきたり、車にタイヤロックをかけられたりした場合は、弁護士に相談することをお勧めします。
特にタイヤロックやレッカー移動による車両の毀損は、「自力救済の禁止」という原則に反しており、逆に店舗側が責任を問われる可能性もあります。
コンビニ側が行う無断駐車対策の実態
コンビニオーナーも、無断駐車による営業妨害に苦慮しています。
近年の対策は非常に高度化しており、「逃げ得」は難しくなっています。
防犯カメラによる証拠記録
最新のコンビニには、高精細な防犯カメラが設置されています。
車両のナンバープレートだけでなく、運転者の顔や出入りの時刻が正確に記録されています。
これらは裁判の際の有力な証拠となります。
登録事項証明書の取得
ナンバープレートの情報があれば、弁護士会照会や運輸支局での手続きを通じて、車両所有者の氏名と住所を特定することが可能です。
店舗側は、この情報をもとに内容証明郵便を送付し、法的な請求手続きを進めることができます。
専門の監視代行サービスの利用
最近では、駐車場に設置されたカメラとAIを連動させ、一定時間を超えて駐車している車両を自動検知するサービスを導入する店舗も増えています。
自動的に警告アナウンスを流したり、その場でコールセンターが対応したりするシステムもあり、24時間体制での監視が行われています。
コンビニにおける駐車のルールとマナー
最後に、トラブルを未然に防ぐための基本的なルールを再確認しましょう。
- 買い物以外の目的で利用しない:コンビニの駐車場は「買い物客専用」です。近隣施設への立ち寄りや、待ち合わせのための長時間駐車は厳禁です。
- 休憩時間に注意する:長距離運転の合間の仮眠などは認められる場合が多いですが、それも数十分から1時間程度が限度です。数時間に及ぶ場合は、PAや道の駅を利用しましょう。
- 無断駐車を発見したら:もし自分の車に警告文が貼られていたら、無視せずにすぐに店舗へ申し出てください。放置は悪質性の判断基準となります。
コンビニの駐車場は、あくまで店舗が営業のために提供している私有地です。
利用者同士が気持ちよく、かつ適正に利用することが、結果として不必要なトラブルや高額な賠償請求を避ける唯一の方法と言えるでしょう。
まとめ
コンビニの無断駐車で「罰金」を請求される際、その金額は看板通りの「〇万円」が直ちに確定するわけではありません。
法的には「実際の損害額に基づいた賠償金」として処理されるのが原則であり、相場を大きく超える不当な請求は無効とされる可能性があります。
しかし、無断駐車が店舗の営業を妨げる不法行為である事実に変わりはありません。
悪質なケースでは数百万円規模の賠償命令が出た判例もあり、防犯カメラや車両特定技術の向上により、逃げ切ることは極めて困難です。
「短時間だから」「看板の罰金は無効だから」といった自己中心的な判断をせず、常に駐車場の利用規約を遵守することを心がけましょう。
万が一トラブルに発展した場合は、感情的にならず、弁護士などの専門家の助言を得ながら、法的に適正な範囲での解決を目指すことが大切です。






