コンビニエンスストアの駐車場は、私たちの生活において非常に身近で便利な存在です。

しかし、その便利さゆえに「少しの時間なら大丈夫だろう」という軽い気持ちで、買い物以外の目的で利用してしまうケースも少なくありません。

実は、コンビニの駐車場はあくまで店舗の私有地であり、公共のスペースではないという認識が不足していることで、思わぬトラブルに発展することがあります。

SNSやインターネット上では「コンビニで長時間駐車をしていたら警察を呼ばれた」「無断駐車で高額な請求をされた」といった書き込みを目にすることもあります。

果たして、コンビニの駐車場に車を停めるだけで警察に通報されたり、逮捕されたりすることは本当にあるのでしょうか。

本記事では、コンビニ駐車場における無断駐車の法的リスクや、警察が介入するケース、そしてトラブルを避けるための正しい知識をプロの視点から詳しく解説します。

コンビニ駐車場での無断駐車は警察に通報されるのか

結論から申し上げますと、コンビニの駐車場に無断で車を停めた場合、店舗側から警察に通報される可能性は十分にあります。

多くの人が誤解しがちですが、コンビニの駐車場は誰でも自由に使える公共施設ではなく、その店舗の運営者が所有または管理している「私有地」です。

店舗側が通報に踏み切る主な理由は、営業への支障を排除するためです。

特に都市部や駅に近い店舗、あるいは大型トラックが頻繁に出入りする店舗では、駐車スペースの確保が死活問題となります。

買い物客が車を停められずに立ち去ってしまうことは店舗にとって直接的な損失となるため、悪質な無断駐車に対しては警察への通報という手段を講じることが一般的になっています。

ただし、警察に通報されたからといって、直ちに「犯罪者」として扱われるわけではありません。

警察が現場に到着した場合、まずは所有者の特定や、車内に人がいる場合は事情聴取、そして車両の移動を促す「警告」が行われるのが通例です。

しかし、この警告を無視したり、常習的に無断駐車を繰り返したりしている場合は、事態がより深刻な方向へ進むことになります。

警察が動くケースと「民事不介入」の壁

警察には民事不介入の原則という考え方があります。

これは、個人間のトラブルや民事上の争い(損害賠償や契約の問題など)に対して、警察権力は介入しないという原則です。

駐車場における無断駐車も基本的には私有地内のトラブルであるため、警察が強制的に車をレッカー移動させたり、所有者に罰金を科したりすることは原則としてできません。

しかし、以下のようなケースでは警察が積極的に動くことになります。

  • 車内に人が倒れている、あるいは不審な物品が置かれているなどの事件性・緊急性が疑われる場合
  • 盗難車や放置車両の疑いがある場合
  • 運転者が店舗スタッフの退去命令に従わず、居座り続けている場合(不退去)
  • 駐車の仕方が著しく悪く、公道への出入りを妨げているなど交通の危険がある場合

警察が現場に来ることで、ナンバープレートから所有者の身元が特定され、自宅や勤務先に連絡が入ることもあります。

また、警察官からの注意を受けた事実は記録に残るため、その後のトラブルで不利に働くことは避けられません。

逮捕される可能性はある?適用される罪状とは

多くの人が最も懸念するのは「駐車場に停めているだけで逮捕されるのか」という点でしょう。

通常、短時間の休憩や買い物のための駐車で逮捕されることはまずありません。

しかし、状況によっては刑事罰の対象となり、現行犯逮捕されるリスクもゼロではありません。

具体的に適用される可能性がある罪状は以下の通りです。

建造物侵入罪(住居侵入罪)

正当な理由なく他人の管理する敷地に立ち入る行為は、刑法第130条の建造物侵入罪に抵触する可能性があります。

コンビニの駐車場は「客が買い物をするために利用すること」を前提に開放されているため、最初から買い物の意思がなく、無断駐車や集合場所として利用する目的で立ち入ることは「管理者の意思に反する立ち入り」とみなされる場合があります。

不退去罪

店員やオーナーから「車を移動させてください」「敷地から出てください」と明確に告げられたにもかかわらず、これに従わず居座り続けた場合は、不退去罪が成立します。

これは警察が最も介入しやすい罪状の一つであり、警告を無視して居座る悪質なケースでは逮捕に至ることもあります。

威力業務妨害罪

駐車場の出入り口を塞ぐように停車したり、複数台で長時間占拠したりして、店舗の営業を著しく妨げた場合は、威力業務妨害罪に問われる可能性があります。

過去の判例でも、長期間にわたる無断駐車が業務妨害と認められたケースが存在します。

無断駐車によって発生する民事上の損害賠償リスク

刑事罰以上に現実的なリスクとして挙げられるのが、店舗側からの民事上の損害賠償請求です。

警察が介入できない「民事」の部分で、所有者は経済的な責任を追及されることになります。

民法第709条に基づき、不法占拠によって店舗が被った損害を補填しなければなりません。

具体的には、以下のような項目が請求対象となり得ます。

請求される可能性のある項目内容の詳細
駐車料金相当額近隣のコインパーキングの相場に基づいた利用料
営業損失その車があったために他の客が停められず失われた売上
調査費用弁護士を通じてナンバープレートから所有者を特定するための費用
弁護士費用督促や訴訟にかかった実費の一部

近年の裁判例では、悪質な長時間放置に対して、1日あたり数千円から数万円の賠償を命じる判決も出ています。

「たかが駐車場」と侮っていると、最終的に数十万円単位の支払い義務が生じるリスクがあることを忘れてはいけません。

「罰金1万円」などの看板に法的効力はあるのか

コンビニの駐車場でよく見かける「無断駐車を発見した場合は罰金1万円を申し受けます」といった看板。

これには果たして法的な強制力があるのでしょうか。

結論から言えば、民間人が勝手に「罰金」を科すことは法律上できません(罰金は国が科す刑事罰であるため)。

しかし、この看板は法律上では「損害賠償額の予定」または「契約の提示」として解釈されることがあります。

もし看板の内容が社会通念上、著しく不当な金額(例:5分で10万円など)でなければ、その駐車場を利用した時点で「その条件に合意した」とみなされる可能性があります。

ただし、実務上は「実際に発生した損害額」を超える請求は認められにくい傾向にありますが、無断駐車をした側が圧倒的に不利な立場にあることには変わりありません。

「看板に法的効力がないから無視していい」という考え方は非常に危険です。

実際に通報されやすいシチュエーション

どのような状況であれば、店側は「通報」という最終手段を選ぶのでしょうか。

よくある通報のきっかけを整理しました。

長時間の車中泊や仮眠

深夜のコンビニ駐車場でよく見られますが、数時間にわたってエンジンをかけっぱなしにしている場合、騒音や排気ガスの問題が発生します。

また、事件や事故(車内での体調急変など)を懸念した店員が警察に通報し、安否確認が行われるケースが多いです。

車両を残して敷地外へ移動する

コンビニに車を停めたまま、隣の飲食店に行ったり、駅を利用したりする行為は最も嫌われる行為の一つです。

店側は定期的に巡回しており、「車はあるのに運転者が店内にいない」状況はすぐに見抜かれます。

複数台での待ち合わせ・集合

ツーリングや旅行の集合場所としてコンビニを利用するケースです。

複数台でスペースを占有すると、他の客の利便性が著しく損なわれるため、早い段階で移動を促されたり、通報されたりするリスクが高まります。

もし警察官に職務質問されたらどう対応すべきか

万が一、無断駐車が原因で警察官から声をかけられた場合、最優先すべきは「誠実かつ速やかな対応」です。

まず、自身の非を認めて速やかに謝罪し、指示に従って車を移動させてください。

ここで「他にも停めている奴がいる」「少しだけだ」といった反論をしたり、感情的になったりすることは火に油を注ぐ結果となります。

警察官はあくまで現場の平穏を保つために来ています。

素直に移動に応じれば、その場で厳重注意を受けて終了することがほとんどです。

身分証の提示を求められた場合は、拒否せずに応じましょう。

拒否することで「何かやましいことがあるのではないか」と疑われ、所持品検査や車両検査など、より深い職務質問へと発展し、拘束時間が延びる原因となります。

また、店側から損害賠償について話をされた場合は、その場での安易な念書への署名などは避け、「後日、誠意を持って対応させていただきます」と伝え、連絡先の交換に留めるのが賢明です。

ただし、支払いを踏み倒すような態度はさらなる法的措置を招くため厳禁です。

まとめ

コンビニの駐車場に車を停めた際、警察に通報されるかどうかは、その駐車の「目的」と「態様」に大きく依存します。

買い物のための常識的な範囲の利用であれば問題ありませんが、無断駐車は所有権を侵害する違法な行為であり、警察への通報や法的措置の対象となり得ます。

警察が介入した場合、即座に逮捕されることは稀ですが、身元の特定や厳しい警告が行われ、場合によっては「不退去罪」などの刑事罰が適用されるリスクがあります。

また、民事上でも高額な損害賠償を請求される可能性があり、決して「たかが無断駐車」では済まされない事態に発展しかねません。

コンビニはあくまでプライベートな商業施設です。

その利便性を享受するためには、最低限のマナーとルールを守ることが不可欠です。

どうしても長時間駐車が必要な場合は、必ず正規のコインパーキングを利用するようにしましょう。